本文へスキップ

経営者のための AI × 事業戦略 ─ 学ぶ・認める・共に創る。

デジ革 一般社団法人デジタル経営革新協会
メニューを開く

COLUMN ・ 2026-05-05

AIとは、集合知の平均値である

権 成俊

AIとは、集合知の平均値である

AI を事業にどう取り入れるか、という議論をする前に、私はいつも一度立ち止まって、ある問いを立てるようにしています。

そもそも、AI とは何なのか。

ここをどう見るかが、すべての出発点だと思っています。観測の肝、と私は呼んでいます。ここの理解が浅いまま「AI で何をしようか」と先に進むと、たいてい使い方を誤ります。

AI のベースは集合知

生成 AI は確かにディープラーニングや機械学習を原理として持っています。けれども、その思考の素材になっているのは、インターネット上の情報や、世の中にある書籍です。要するに、人類がこれまでに公開してきた情報の集合知が AI の経験値になっている。

その集合知に対する重み付けも研究は進んでいますが、本質的には インターネット上にある情報の平均値のようなものが AI の知識になっている、と捉えてよいと思います。

そう考えると、AI の能力には自ずと境界が見えてきます。

答えがあることと、答えがないこと

AI が得意なのは、答えがあることに答えることです。

すでにインターネット上のどこかに答えが存在している、あるいは書籍に書かれている。そういう情報であれば、AI は人間より早く、大量のデータの中から見つけてきます。プログラミングの定型的な書き方、英訳、要約、分類、調査、整理。これらはどれも「答えがどこかにある」仕事です。だから AI は強い。

一方で、AI が原理的に苦手なのは、答えがないことです。

たとえばアート。たとえば経営戦略。たとえば未来予測。これらは、世界中の70億人が考えても答えが出てこない、本来そういう種類の問題です。集合知の平均値からは、新しい答えは出てこない。

ChatGPT に「うちの会社の戦略を立ててください」と尋ねれば、それなりにそれっぽい答えは返ってきます。けれども、それは集合知の平均値、つまり「だいたいの会社が言いそうなこと」に過ぎません。だから、それを読んでも、違いも、深さも、覚悟も生まれない。

どう使うかは、AI を「どう見るか」に依る

AI を業務に取り入れるとき、まず自分たちが何を AI にやらせようとしているのかを考えてください。

それは、答えがあることでしょうか。それとも、答えがないことでしょうか。

答えがあることなら、AI は強力な武器になります。スピードが上がり、コストが下がり、人間の手を解放してくれます。

答えがないことなら、ただ AI に丸投げしても発散するだけです。ばらばらと「断片的なアドバイス」が並ぶような出力になり、結局のところ判断は人間がしなければなりません。

ここを見極めずに「とりあえず AI を使ってみよう」というのは、実はかなり危ういアプローチです。

観測点が変わると、使い方が変わる

AI とは何か、という問いに、私は「集合知の平均値である」と答えています。

これは AI を低く見ている、ということではありません。集合知の平均値という、人類がこれまでなしえなかったほど膨大な知の集積に、誰でもアクセスできるようになった。これは間違いなく革命的なことです。

ただし、それを どう使うか は、AI をどう見るかによって決まります。

私たちが戦略指南 AI で取り組んでいるのは、まさにこの「答えがないこと」の領域に AI を踏み込ませるという、かなり高度なチャレンジです。それがどうやって成り立っているかは、また別の機会に書きます。

まずは、AI に何を任せ、何を任せないか。その線引きを、自分の事業について一度ゆっくり考えてみてください。

← コラム一覧へ