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経営者のための AI × 事業戦略 ─ 学ぶ・認める・共に創る。

デジ革 一般社団法人デジタル経営革新協会
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COLUMN ・ 2026-05-05

「AIの使い方」を学ぶ前に

権 成俊

「AIの使い方」を学ぶ前に

私たちも AI に関する教育プログラムを提供しています。だから余計にそう感じるのかもしれませんが、AI 関連の教育市場を見ていると、ほとんどが AI の細かい使い方やテクニックを教えるものばかりだということに気づきます。

「ChatGPT で議事録を作る方法」「画像生成 AI のプロンプト集」「業務に使える AI ツール30選」。

それらが無意味だ、と言いたいわけではありません。実際、現場で動かす担当者には必要な知識です。

けれども、もっと大事なことが、すっぽり抜け落ちている気がしてならないのです。

「何に使うか」が決まっていない

抜け落ちているのは、そもそも何に使うか、という問いです。

AI を含めた戦略立案、つまり自分たちの事業に AI をどうやって取り込むか。ここが定まらないまま、目先の自動化だけを進めていく。これは、いわゆる DX が失敗した時とまったく同じ構造です。

DX の本来の意味は、デジタルによるトランスフォーメーション(変革)です。ところが、多くの会社で起きていたのは、デジタリゼーション(デジタル化)止まりでした。紙で回していた仕事を、そのままクラウドに置く。FAX を電子化する。それだけで「DX 完了」と言ってしまう。

枠組みを変えないままデジタル化すると、必ずどこかで行き詰まります。そして「やっぱり枠組みを変えないとダメだ」と気づいた瞬間、それまで作ったデジタル化の仕組みは、新しい枠組みに合わないからやり直しになる。結局二度手間です。

上流から、考える

だから、まずは上流から考えてください。

  • どんな顧客を選ぶのか
  • その顧客に対して、自分たちは何を提供するのか
  • 競合と比べて、選ばれる理由は何か
  • それを実現するために、業務プロセスはどうあるべきか

ここまでが整ってから、ようやく「では、AI でどこを効率化するか」が決まります。

順番が逆なのです。多くの会社は、目先の効率化から始めて、後から戦略を作ろうとする。けれども、戦略が変われば業務プロセスも変わるので、効率化の対象もすべてやり直しになります。最初から戦略を起点にしておけば、効率化は戦略を加速するための投資になる。

効率化を「先にやる」のは悪くない、ただし

「いや、戦略を考えている時間がないから、まず効率化から始めたい」という気持ちもよく分かります。

それは別に否定しません。ただし、走りながら、戦略のことを並行して考えること。これだけは外さないでください。効率化に没頭しているうちに、戦略の議論が止まってしまうと、結局あとから取り返しがつかなくなります。

私たちが「AI の使い方を教える」という講座にあまり熱心ではないのは、そういう理由からです。使い方を教えるだけでは、トランスフォーメーションになりません。

学ぶべきは「何に使うか」「自分たちの事業をどう変えるか」です。

その問いに答えを出すための時間を、AI のテクニック習得より先に取ってください。

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