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デジ革 一般社団法人デジタル経営革新協会
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COLUMN ・ 2026-05-05

「半年早く」効率化できても、差はつかない

権 成俊

「半年早く」効率化できても、差はつかない

最近、経営者の方から AI の活用について相談を受けるとき、私はだいたい同じ話を繰り返しています。

「AI で経理を自動化したいんです」「ネットショップの商品マスターを AI に自動でデータ化させたいんです」「総務の仕事を AI で省力化したいんです」。

もちろん、それは重要な変化です。領収書をスキャンするだけで自動的に仕訳されるとか、カタログから商品情報を読み込んで自動的にページに書き出されるとか、業務効率は確実に上がるでしょう。

ただ、ひとつだけ申し上げたいことがあります。

遠くない未来に、それはみんなできるようになります。

半年早いだけのこと

AI も、インターネットと同じく、社会全体に広くインパクトを与えるツールです。そして同時に、世界中の企業が同時に手に入れられるツールでもあります。

つまり、自分たちが AI で経理を効率化できたとしても、競合も同じように効率化できる。少し早く取り組んでも、半年か1年もすれば横並びになります。それは差別化ではなく、半年早いだけのことです。

これはインターネットが登場した時にも、まったく同じことが起きました。最初は「ホームページを作りましょう」「ネット通販を始めましょう」「SNS で集客しましょう」と、目先の手法に飛びついた人がたくさんいました。確かに最初の数年は売上が上がります。けれども、参入障壁が低いものは、すぐに競争になる。スピードや量で勝とうとしても、結局利益は薄くなっていきました。

枝として取り込むか、幹として取り込むか

私が伝えたいのは、AI を「枝」として取り込むのではなく、「幹」として取り込んでくださいということです。

枝として取り込む、というのは、自分たちの今の事業のままで、業務の一部に AI を当てはめていくこと。集客に AI を使う、効率化に AI を使う。これだと、ツールが進化しても事業の本質は何も変わりません。

幹として取り込む、というのは、自分たちの事業そのものを根本から見直すこと。AI が登場したことで消費者の行動はどう変わったか、消費者は次に何を求めるようになるか、そこに対して自分たちは何を提供できるか。事業の幹に手を入れることです。

これだけ大きな社会の変化が起きると、消費者のニーズも必ず変わります。従来満たされていたニーズは満たされて消え、その先により高次の新しいニーズが生まれてくる。そこに新たな商品やサービスを作って参入する。これが私たちが提唱しているデジタルブルーオーシャン戦略です。

効率化を否定するわけではない

念のため申し上げますが、業務効率化が悪いと言っているわけではありません。資源のない若い人や小さな会社であれば、まず手の届くところから AI を使ってみるのは当然です。それは事業の足場づくりにもなる。

ただ、それと並行して、自分たちが次の段階にどう進むかを考えていなければいけません。AI で半年早く効率化できた、その時間を、自社の事業の根本を見直すことに使う。そういう経営でなければ、また同じレッドオーシャンに飲み込まれます。

業務の効率化を進めながら、その隣で、AI が変えた消費者のニーズに目を向ける。両方を意識しながら走ってください。

それができている経営者は、AI 時代でも生き残ります。

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