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COLUMN ・ 2026-05-05

経営者は、何度もイノベーションする時代

権 成俊

経営者は、何度もイノベーションする時代

ハーバード・ビジネス・レビューや、いろいろな経営の専門家の話を読んでいると、ここ数年、繰り返し言われていることがあります。

環境の変化が、あまりにも早くなったということです。

それに伴って、ほとんどの経営者が、ひとつの事業にこだわって生涯やり抜くということができなくなりました。経営者の人生の中で、何度かイノベーションを迫られる場面が来る。これが、もう当たり前になっています。

つまり、イノベーションスキルは、経営者にとって必須のスキルになった。私もまったく同じ意見です。

多くの経営者は、経験の足元から起業している

ところが、ここに難しさがあります。

多くの経営者は、最初の創業の時は、自分の経験の足元から事業を起こしているのです。たまたま若い頃にやっていたこと、勤めていた会社の事業の関連、あるいは家業を継いだ。

それで偶然うまくいくことは、もちろんあります。けれども、「その事業ドメインが戦略的に良い場所かどうか」を客観的に調べてから起業した経営者は、実はそんなに多くありません。

これは別に責めているわけではないのです。ご縁とか、勢いとか、若さとか、起業にはそういう要素も大事です。けれども、それが行き詰まったときに、初めて「客観的に事業を作る」というスキルが必要になります。

そして、そのスキルを持っていない経営者がほとんどなのです。

「客観的に事業を作る」とは何か

戦略的に事業を作る、というのは、感覚や思いつきではなく、良い市場を選ぶところから始まります。

マイケル・ポーターの話で、こういうものがあります。

良い市場では、業界の1位から10位まで全員が儲かる。悪い市場では、業界トップでさえ儲からない。

つまり、自分たちが競争に勝つことを考える前に、そもそも競争に勝った先で儲かる市場かどうかを確かめる、ということです。

良い市場とは、こういう条件を満たすもの。

  • 市場規模が、ある程度大きい
  • それに対して、競合が少ない(競合倍率が低い)
  • これからもしばらく成長期が続く

ここに加えて、参入障壁が高ければ、後から競合がどっと押し寄せてレッドオーシャンになる、ということも避けられます。マイケル・ポーターのファイブフォース・モデルが、ここを丁寧に分析する道具です。

資源がない者にできるイノベーション

しかし、これは正直なところ、大企業の議論でもあります。

参入障壁の高い市場というのは、たいてい何らかの資源を要求してきます。免許であったり、特許であったり、地域の特産品であったり、設備や技術であったり。資源を持たない中小企業や個人にとっては、そもそも参入できない。

では、資源のない者にできるイノベーションとは何か。

それは、価値観で差別化することです。

「短期的には儲からないけれど、自分はこれをやりたい」「いまはニーズが小さいけれど、これは絶対に必要なことだ」と信じられるテーマを、誰よりも早く始める。そして、ニーズが立ち上がってくる前に、自分たちが先に足場を築いてしまう。

これがブルーオーシャン戦略の本質的な姿であり、私たちがデジタルブルーオーシャン戦略と呼んでいるものの中身です。

何度でも、最初の一歩を踏み出すこと

イノベーションスキルというと、何か特別な発想力や勇気のように聞こえるかもしれません。

けれども、その実体は、これまで何度も繰り返してきた「客観的な事業の組み立て」を、もう一度、あるいは何度でも、やり直せるということです。

  • 自分の経験から離れて、市場を見る
  • どこに需要があり、どこに競争が薄いかを観察する
  • そこに自分の価値観を重ねて、選ぶ場所を決める
  • 戦略を立てて、足場から組み直す

経営者の仕事は、最初の起業のときだけでなく、人生で何度も、これを繰り返すことになります。

そして、AI と AB3C がある時代、この組み立て直しのハードルは確実に下がっています。何度もイノベーションを迫られる時代だからこそ、その作業を支える道具を持っておいてください。

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