COLUMN ・ 2026-05-05
市場選定をどうやるか ── インターネット時代の定量化
権 成俊
市場選定をどうやるか ── インターネット時代の定量化
良い市場を選ぶことが、戦略の出発点である。
そう書きましたが、では実際にどうやって市場を選ぶのか。ここを語っていなかったので、書いておきたいと思います。これは私たちの差別化要素のひとつでもあります。
「お金がかかるもの」だった、市場調査
インターネットが普及する前、市場調査というのは、かなり高価な仕事でした。
調査会社にアンケートを依頼して、グループインタビューを実施して、デプスインタビューを重ねて。ひとつの調査をやるのに、何百万円もかかる。市場選定のために細かく調べようとすると、何千万円という規模になることもありました。これは大企業にしかできない投資です。
中小企業にとって、戦略立案の最初のハードルは、ここにありました。市場の客観的な姿を掴むこと自体が、お金の壁に阻まれていたのです。
私たちはそのハードルを、インターネットを使って下げることに取り組んできました。
CGC・UGC を、定量化する
インターネット上には、消費者が自分の言葉で書き残した情報が大量にあります。
CGC(Consumer Generated Contents)、UGC(User Generated Contents)と呼ばれる、ブログや SNS、レビュー、Q&A サイトの書き込みです。ここに、消費者が何を求めているかのシグナルが溢れている。
多くの方は「ここを参考にしましょう」と定性的に眺めて終わります。私たちが力を入れてきたのは、これを 定量化する手法を持つことでした。具体的に4つあります。
1. キーワード検索の定量分析
検索キーワードの絞り込み行動から、市場の構造を読み取る方法です。
たとえば「ヘアアクセサリー」というキーワードで月に2万回検索されているとします。それに対して「ヘアアクセサリー 簡単」が5,000回。すると、1万5,000人は「ヘアアクセサリー」だけで満足し、5,000人は満足せずに絞り込み検索をしている、と読めます。
これを樹形図で広げて、どこで検索数がガクッと減っているかを見ます。減ったところが、ゴールキーワード。つまり、最も満足度が高く、検索の目的が達成されたキーワードです。
2. SEO競合度を、独自に定義する
「このキーワードでどのくらいの企業が真剣に競合しているか」を測る方法です。
ターゲットキーワードがタイトルに含まれているページが、検索結果の何ページ目に何件出てくるか、特に1ページ目から2ページ目(10位〜20位あたり)にどれだけ並んでいるかを数えます。
なぜタイトルか。意識してターゲティングしている会社は、SEO 上で最も効くタイトル要素に、必ずそのキーワードを入れてくるからです。タイトルに入っている数が多ければ、競合の意識が高い市場、ということです。
3. キーワードのグルーピング ── ユーザーモデル化
絞り込みキーワードを意味でまとめて、消費者像を描く方法です。
「ヘアアクセサリー 簡単」と検索する人は、簡単に作れるものを探している人。「ヘアアクセサリー 通販」と検索する人は、通販で買いたい人。こういうグループを「ユーザーモデル」と呼んでいます。
従来のマーケティングでは、年齢・性別・地域などの属性(デモグラフィック・ジオグラフィック)でユーザーをモデル化することが多かった。けれども私たちはインターネット時代だからこそ、行動変数でモデル化する。リアルタイムにニーズを把握できるのが、この時代の強みです。
4. Q&A サイトでペルソナを掘る
キーワードグループを Yahoo! 知恵袋などに突っ込むと、そのキーワードを含む相談が出てきます。
その相談こそが、そのユーザーモデルのペルソナを理解するヒントになります。「なぜこの言葉で検索したのか」「何に困っているのか」「どんな解決を期待しているのか」。本人の言葉で書かれた相談を読むほど、ペルソナの解像度が上がる質の高い情報源はありません。
流れとして繋ぐ
これら4つを連結すると、こんな流れになります。
キーワード検索の量と絞り込みの定量化 → 競合度の測定 → キーワードのグループ化(ユーザーモデル化)→ Q&A サイトでペルソナ探索
ここまでやって、初めて「この市場は、どんな顧客が、どんなニーズで、どのくらいの規模で動いているのか」が立体的に見えてきます。
これに加えて、Google アナリティクスを使った行動分析、フェルミ推定での市場規模推計、競合サイトの分析、自社分析。これらを総合して市場選定を進めるのが、私たちのやり方です。
そして、AI が普及した今、この一連の作業はさらに早く、安くできるようになりました。何百万円もかけて調査会社に依頼する時代では、もうないのです。
中小企業や、起業しようとしている個人にこそ、この手法を使ってほしいと思っています。