COLUMN ・ 2014-03-01
オムニチャネルの時代① ネット通販の成熟期
権 成俊
オムニチャネルの時代① ネット通販の成熟期
ネット通販の誕生
日本のインターネット黎明期だった1990年代後半。一般家庭からインターネットに接続するには、電話回線を利用する必要がありました。費用は電話の通話料と同じく、1分数円。通信速度も遅く、いまのブロードバンドと比較すると数百分の一という速度です。何かの情報を見るためにインターネットに接続すると、数十分で数百円もの費用がかかりました。
2000年頃から状況が変わります。ADSLやケーブルテレビ回線によるブロードバンドの普及が始まりました。ブロードバンドとは、かつての電話回線よりも帯域が広い(通信速度が速い)回線という意味で、電話回線よりも数倍から十数倍も速く、画像が多く含まれるページでも数秒で表示できました。
しかし、ブロードバンドの普及には、通信速度の向上以上にもっと大きな意味がありました。ブロードバンドは、常時接続環境をもたらしたのです。常時接続とは、必要なときだけ繋ぐのではなく、パソコンを立ち上げている間はずっとインターネットに接続している、という状態のことです。通信費用も月額固定が一般的になり、毎月5,000円ほど払えば、24時間365日インターネットに接続し放題になりました。
これによって、インターネットユーザーは時間の制限なく、好きなだけウェブサイトを見て回るようになりました。検索エンジンで欲しい情報を調べたり、欲しい商品を見つけて購入する、という使い方が一般的になったのです。商品の比較検討が必要なネット通販も、心置きなくできるようになりました。
買い手が増えれば、売り手も増えます。ビジネスチャンスを狙ってネットショッピング市場への参入が増え、ネットショップが急増しました。これに一役買ったのが、楽天市場・Yahooショッピング・オークションなどの大手ショッピングモールです。初めての方には難しかったネットショップ制作も、モールなら比較的簡単にできました。アクセス対策が苦手な方でも、モールの広告を購入すればアクセスを獲得できました。当時は競合も少なく、多くのネットショップが数か月で月商100万円を超えることができたのです。
成長期
日本国内のインターネットユーザー数は急激に増え、2003年には全人口の6割に達しています。しかし、ネットショップはまだ黎明期でした。ネットで買う人は増えたが、ネットで売る人はまだ少ない。このギャップが大きかったため、当時ネットショップを始めれば、特別なノウハウや技術がなくても毎月数百万円という売り上げを上げることができました。
しかし、ネットショップの春は長くは続きません。徐々に競争が激しくなります。
2004年、日本国内最大の検索エンジンYahoo! JapanのシステムがYSTに切り替わり、いわゆるロボット型検索エンジンになりました。SEOが、日本最大の検索エンジンでも通用するようになったのです。検索結果の上位に表示されれば、それだけでたくさんの方がサイトを訪問し、売り上げも増えました。SEOの一大ブームが起き、ビジネスチャンスを求めてネットショップを始める方が増えました。
リスティング広告の普及も、競争激化に拍車をかけました。1クリック9円程度で検索結果画面に広告が出稿でき、SEOで上位表示できなくても比較的安価にアクセスを集められるようになりました。
Google アナリティクスやディスプレイ広告の浸透など、ネットマーケティングの新しい手法が次々と登場し、いわゆるネットマーケティングブームが起きます。以前と比較して競合が増えたため、ネットショップの運営は簡単ではありませんでしたが、競争に勝てば売上が伸びる、という時代でした。
成熟期
2008年頃になると、ネット利用者は日本の全人口の75%に達しました。
ネットショップの数はますます増え、あらゆるジャンルで競争が起こりました。大企業のネット通販も増え、価格と納期で勝負するには資本力が必要になりました。これまでのように、仕入れ品をネットで売って利益を出すことは難しくなりました。
かつては、ネットで売ること自体が希少価値であり、選ばれる理由でした。しかし、いまではネットでモノを売るには「選ばれる理由」が必要になったのです。成長期に急激に規模を拡大したネットショップの多くは、競争参入が早かっただけで明確な強みがありませんでした。そのため、このころには業績が伸び悩みました。
楽天市場などのショッピングモールでは、独自ドメインと異なり、アクセス対策やマーケティングの仕組みの多くを共有しているため、差別化が難しい環境にあります。SEOやリスティング広告による集客が効果的に利用できなかったり、Google アナリティクスが導入できないなどの限界もあります。差別化できるのは、商品そのものと、楽天内のカテゴリ経由でたどり着く商品ページくらい。そのため、楽天市場に出店しているネットショップは、利益を出すことがより一層難しくなりました。
さらに、アマゾンの急成長がネットショップの競争を著しいものにしています。いまや楽天市場に出店しているネットショップで、アマゾンにも出店しているショップが多い。同じ商品を買うならアマゾンの方が同じ価格でより早く配送してくれます。レコメンデーションも手伝って、特にどこでも売っているような商品を通販で買うなら、アマゾンで購入するのが最安・最短発送であることが多いのです。
これからのネットショップは、アマゾンに勝てる理由が必要なのです。