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デジ革 一般社団法人デジタル経営革新協会
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COLUMN ・ 2026-05-05

根があって、花が咲く ── 父から教わった、戦略の見方

権 成俊

根があって、花が咲く ── 父から教わった、戦略の見方

私は子どもの頃、父からこんな言葉を聞きました。

根があって、花が咲く。

その人の根っこを見れば、どんな花が咲くかは、だいたい見えるものだ、と父は言いました。

その時は何のことか分からなかったのですが、自分が仕事をするようになってから、これは戦略の話そのものだな、と気づきました。

「客観的に良い市場」だけでは足りない

別のコラムで、市場選定が大事だ、客観的に良い市場を選びなさいと書きました。

その通りなのですが、それだけでは戦略は完成しません。なぜなら、「客観的に良い市場」と「自分たちが本当にやりたいこと」が一致するとは限らないからです。

逆に言うと、客観的に魅力のある市場であっても、自分たちが心からやりたいと思えないなら、長続きしません。短期的に儲かったとしても、やがて競合が増え、価格競争になったとき、踏みとどまれない。「自分の根っこ」が、その事業に繋がっていないからです。

戦略を立てるうえで、本当に大事なのは、資源と価値観と機会のマッチングです。

  • どんな機会(市場)があるか
  • 自分たちにどんな資源があるか
  • そして、自分たちの価値観は何か

この3つが噛み合ったところに、初めて、その人らしい戦略が立ち上がります。私たちが「価値観を戦略に」というキャッチコピーを使っているのは、まさにそのためです。

経営者の価値観を、どう知るか

戦略指南をするとき、私たちは経営者の価値観を、いくつもの方法で読み取ります。

ひとつは、自社のウェブサイトを見ることです。ウェブサイトには、その会社の人格が驚くほど現れます。カチッと定義された型をブレずに守り続ける経営者と、新しいことをどんどんやり散らすほど行動力のある経営者では、ウェブサイトの作り方がまったく違うのです。

商品ページの並べ方、キャッチコピーの選び方、写真のトーン、社員の見せ方。これらは表面的なデザインの好みだけで決まっているわけではなく、その背後に経営者の価値観が透けて見えています。

もうひとつは、経営者の人生そのものをインタビューすることです。

子どもの頃の話、初めて勉強や部活に夢中になった瞬間、最初の異性との関わり、最初の就職をなぜそこに決めたか、最初の挫折は何だったか。

「戦略の話を聞いているのに、なぜそんなプライベートな話を?」と最初は驚かれます。けれども、こういう人生のひとつひとつの選択にこそ、その人の価値観が隠れているのです。**「この人は、こういう時にはこう選ぶ人なんだ」**という根っこの形が、見えてくる。

根を見て、花を咲かせる

「根があって、花が咲く」という父の言葉は、結局、ここに繋がっています。

その人の人生・価値観・歩んできた道筋(根っこ)を観察すれば、その人が大切にしているもの・避けたいもの・どこに踏ん張れるかが見えてくる。それが見えれば、**その人が長く咲かせ続けられる花(事業)**は何か、自ずと絞られてきます。

逆に言えば、根を見ずに花だけ眺めて「あの花が綺麗だから、あなたもあの花を咲かせなさい」と勧めても、それは続かない。土壌が違うからです。

AI 時代でも、ここは人にしかできない

戦略の組み立ては、これから AI がどんどん助けてくれるようになります。市場分析も、競合分析も、AB3C のフレームワーク化も、AI が代行できるようになっています。

けれども、経営者の根を見ること、価値観を引き出すことは、いまも、おそらくこれからも、人と人との対話の領域に残るのではないかと思っています。インタビューを通じて根に触れ、それを戦略に翻訳する。この仕事は、AI にはまだ難しい。

それは「価値観」というものが、肉体を伴う人間にしか持ち得ないものだからです。これは別のコラムで書いた、AI には非合理的な判断ができない、という話と地続きです。

戦略を立てるとき、まず自分の根を見てください。そして、その根からしか咲かない花を、見つけてください。

短期的には儲からないかもしれません。けれども、その花は長く咲き続けます。

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