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デジ革 一般社団法人デジタル経営革新協会
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COLUMN ・ 2026-05-05

儲からないけれど、やりたい ── それが戦略になる

権 成俊

儲からないけれど、やりたい ── それが戦略になる

別のコラムで、AI によって戦略立案が民主化されていく、と書きました。

そう書くと、「では経営者の仕事はなくなるのか」と問う方がいます。

そうではありません。むしろ、AI が戦略の組み立てを助けてくれるようになるからこそ、経営者にしかできない部分が、これまで以上に浮き彫りになってきます。

それは、価値観です。

戦略とは、合理に抗うこと

差別化とは何か、と問われたら、私は迷わずこう答えます。

みんなと違う選択をすることです。

選択は、ポジションです。ポジションは、行動の積み重ねです。だから、他の人と違う行動をする、ということが差別化につながります。

では、「他の人と違う行動」とはどういうことか。普通は、一番儲かりやすそうな行動をします。それに抗うこと。短期的には儲からないけれど、それでもやりたいことをする。それが、戦略の起点になります。

その裏側には、必ず価値観があります。「損してでもやりたい」「お金を払ってでもやりたい」と思えることがあるかどうか。これは企業が収益を得るという視点から見れば、明らかに非合理的な判断です。

戦略は、合理の積み重ねからは生まれません。合理に抗うところから生まれます。

AIには、非合理的な判断ができない

そして、ここが大事なところですが、AI は非合理的な判断ができないのです。

それはなぜか。AI には、他の存在と異なる個性的な感覚がないからです。

そもそも個性的な感覚とは何か。これは少し抽象的な話になりますが、人間というものは、精神や頭脳だけでできているのではなく、肉体に支配されている存在です。肉体と心は繋がっています。そしてその肉体は、何十万年もかけて重ねられてきた遺伝の蓄積から生まれてきます。

人間同士の競争の中で、他の人間と違う部分があるからこそ優位性が生まれる、というのは遺伝の法則そのものです。私たちの個性は、生まれつきの肉体的な違いを通じて、ずっと前の世代から積み上げられてきた何かなのです。

AI には、その何十万年分の蓄積がありません。集合知の平均値はあっても、肉体に裏打ちされた個性はない。だから、合理から外れた選択をする「動機」を、AI は自分で作り出せないのです。

経営者の仕事は、価値観の側にある

戦略立案の手間は AI が肩代わりしてくれる時代になりました。調査も、分析も、フレームワークの整理も、文章化も。これらは AI が圧倒的に得意な作業です。

それに対して、経営者にしかできないことは、自分は何を選ぶかを決めることです。

  • どの市場で勝負するか
  • どんな顧客を選ぶか
  • 何を捨てるか
  • 短期的に儲からないけれど、長期的にやりたいことは何か
  • 自分の会社の存在理由は何か

これらの問いに、AI は答えを出してくれません。出してきた答えは「だいたいの会社が言いそうなこと」で、結局そこに自分らしさは乗りません。

経営者が AI 時代に問われるのは、価値観に基づく非合理的な判断を、どれだけ自分の言葉でできるか、です。これは AI には真似できない領域です。

民主化されるからこそ、価値観が問われる

戦略を立てるハードルが下がる、ということは、戦略を立てているかどうかでは差がつかなくなる、ということです。

差がつくのは、どんな戦略を立てたか。そして、その戦略の裏に、本当に「自分の価値観」があるか

儲からないけれど、やりたい。

それを語れる経営者が、AI 時代を生き残っていきます。

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